年末になると「歳を取ると1年がすごく早くて…」という話をよく耳にしますが、私自身もつくづく最近そう思うようになりました。子どもの頃は1日が早くて1年を長く感じ、歳を重ねる毎に1日が長くて1年を早く感じるようになる傾向は、確かにあるようです。
その理由として、例えば10歳の子どもだと、その1年間は人生から見ると10分の1の長さで、30歳の大人だと30分の1となります。したがって、歳を重ねる毎に体感する1年の長さの割合が次第に小さくなるので、1年が早く過ぎると感じるようになるというものです。
また、もう一つの理由としては、脳の活動状態にあると言われています。子どもの脳は発達過程で全ての出来事は新鮮で全てを記憶しようとフル活動をしていますが、歳を重ねる毎に脳は既に経験したことは新たに記憶する必要がなくなり、活動がゆっくりになって行くため、その違いで「1年が過ぎるのが早い」と感じるのだということです。
特に後者の理由からすると、一日一日を意識して大切に生活をして脳に記憶残す努力をしないと、どんどん1年が無駄に早く過ぎ去って行くことになる訳ですね。そう考えると、何だか寂しい思いになってしまいます。
お釈迦さまの語録をまとめた『法句経』という原始教典の中の260番目に「頭髪が白くなったからとて“長老”なのではない。ただ年をとっただけならば“空しく老いぼれた人”と言われる」という言葉があります。これには、ハッとされる方も少なくないのではないでしょうか?。
年の瀬が近づくと、各所で「忘年会」が賑やかに行われ、お付き合いの関係で連日お酒漬けという人も多いのではないかと思います。しかし、日々を大切に生活して行かないと忘れるべく経験や記憶も乏しく、本来の目的がどこかへ頓挫してしまいます。できれば“忘年会”ではなく、1年の出来事に対してみんなで確認し合い、良かったことは更に発展を考え、悪かったことには反省を加え、その全てを記憶に残して行く“憶年会”であるべきでしょうね。“空しく老いぼれた人”と言われないためにも…。
丹波古刹霊場第十番 白毫寺 荒樋勝